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2009-09

生活リズムについて2 - 2009.09.26 Sat

おもに30代の頃だったが、かつて私は、10年にわたってうつに伴うかなり強い不眠症を経験している。
今回は、前回掲げたテーマ「生活リズム」について、私がある一定の考えを持つにいたった経緯を説明するために、不眠の10年の中でも、最も症状の強かった2~3年間の生活がどのようなものだったかについて、ある程度詳しく書いてみようと思う。
なお、匿名で書いているブログではないので、発症の誘引となった家族関係・人間関係上の問題などについてはあまり触れられないことをお断りしておきたい。



私は、家族や人間関係における一つの葛藤をある程度乗り越えたのを機に、自分の思い通りに生きることを決心した。
私のうつと不眠は、それまでの職を捨て、まずは大学院浪人となってカウンセラーを目指すことにした、まさにその時に始まったのである。
大逆風の中、自分の向かっている方向が本当にこれでいいのか、本当に思い通りになど生きてよいのか、何の確信も得られぬまま、それでももう直進するしかないという深い不安を抱えた状況でのことだった。

当初は、ただひたすら入眠が困難なタイプの不眠が数年続いた。
早朝覚醒はなかったが、不眠の強さ自体はひどいものだった。
履修生として大学の授業に出なければならない平日の就寝は、まず早くても早朝の4~5時。休日は好きなだけ眠ることができたので、無理に眠らなくてよいという解放感から、就寝は午前8時から10時くらいの間だった。もちろん、その日に起き出すのはたいてい午後3時頃から夕方である。
土日に1週間の睡眠不足分を取り戻すわけだが、それを入れても、平均睡眠時間はいいところ2~3時間程度だったと思う。

一睡もできないことも、1~2週間に一度くらいあった。
しかし、何が何でも、とりあえず大学院に受からないことには希望が潰えてしまう状況だったので、独り暮らしのマンションにはテレビも置かず、眠れない時間はすべて入試のための勉強に当てた。
当時はまだ臨床心理士認定協会の指定大学院自体が少なく、しかもユング派系のところは京大と甲南大くらいしかなかったので、倍率も異常に高かったのである。
机の前に座っている時間だけでも、1日平均で約16時間、食事をしている時間も英文を読み続けていたので、少なくとも18時間ほどは勉強していたかもしれない。

もともと学校での成績は悪くなかったが、勉強が好きだったわけではない。
親がやかましいから机には向かうが、ほとんど身が入らずに遊んでしまい、自己嫌悪するタイプだった。
しかし、目標が絞られるというのは力が入りやすいというか、大学院入試のこの間ばかりは、自分でも驚くほど勉強することが苦にならなかった。というよりも、ただただ必死だった。

言うまでもなく、朝、寝床から起き出すには常に大変な努力を必要とした。
それでも、不眠があまりに強かったせいで、一睡もせずとも、大学での講義の時などに眠気が起こることは一切なかった。
だから、あまりにつまらない講義を受ける時などは、居眠りする代わりに、とにかく何かを思索していた。
それどころか、不眠の10年間は、長時間電車に乗っていてさえ、居眠りの気配すら一度も覚えなかったのである。

この1年間は夢見もひどく、大洪水や大地震といった、いわゆる没落夢を何度も見た。
没落夢とは、統合失調症を発病するときなどに見るタイプの夢だが、私の場合、幸いなことに、そういった夢にも次第に一応の救いらしき状況は現れるようになっていった。
たとえば、大地震によって町は瓦礫の山と化すが、その後人々がぞろぞろと這い出してきて、町の再建を目指すなどである。


このままでは不眠のために身体を壊してしまうのではないか、翌日に支障が出るのではないかと、眠れないことに強い焦りを覚えていたのは、初めの頃だけである。
もちろん、常にひどい気だるさにまとわりつかれてはいたが、眠れないものは眠れないのだから仕方がない。
精神科で眠剤・導入剤を処方してもらっても、眠れる時間が少しばかり増えたのは最初の1~2回だけで、ただ気だるさが増すばかりだったので、ほとんど飲まなかった。
それに、1~2時間程度ではあるが、一応ほとんどの日に眠れてはいたので、このままやれるところまでやるしかないと思っていた。

少なくとも大学院浪人の1年間に、緊張が緩んだと自覚した記憶は皆無である。
その緊張は、当然ながら受験直前にピークとなった。
実際、私はまる3昼夜一睡もせずに大学院入試に臨んだのである。
まともに答案できるのかどうか心配したが、頭の働きへの影響はまったく感じなかった。
思いのほか楽に答案用紙を埋め、後は一次試験の採点を待ち、同日の夜に面接試験という日程だった。

しかし、ついに面接試験も終わり、大学を後にするや否や、私は激しい倦怠感に見舞われた。
帰りの電車では、座席に座っていることすら辛く、駅から自宅まではどうやって帰ったのかあまり記憶がない。意識を失ってしまわぬよう、歯を食いしばっていたことしか覚えていない。
自宅マンションのドアを開けて入り、鍵を閉めると、たちまちその場に倒れこみ、荷物はその場に捨て置いて万年床へと這いずった。
途中で何とかたくさんの水だけは飲んだが、すでに熱は39度を越えており、あとは何も口にできないまま実家に電話し助けを求め、そのまま明かりも消せずに眠り込んだ。

高熱に伴う筋肉の炎症のため、全身に激痛があり、私は数分おきに自分の叫び声で眼を覚まさなければならなかった。
特に首の右側の炎症がひどいらしく、激しい痙攣を起こし、数秒から数10秒おきに首が右肩に着くほど折れ曲がるように引き攣った。もちろん、そのたびに今でも思い出したくないほどの激痛が走った。

自分の首の筋肉が、まるで別の生き物のように感じられた。
近所に声が聞こえることなど気にはしていられず、私は自分の首が折れ曲がるたび、声がガラガラになるまで、歯を食いしばったまま叫ばねばならなかった。

翌日から、母が2泊3日で面倒を見にきてくれた。
そのようにひどい状態は何日も続いたが、ゆるい粥しか喉を通らなかったのは2日目の昼までで、その後はかなりの量の飯を食うことができた。
実を言うと、私は文科系のクラブにしか所属したことがないにもかかわらず、高校でも大学でも伝説的な大食漢であり、どれほどひどい風邪を引いたときにでも、食事だけはかなりたくさん摂ることができたのである。
今はもちろん食事の量は多くないが、若くて代謝がよかったこともあってか、すごい量を食べていたときのほうがずいぶんと痩せていた。

それでも、首の激痛と痙攣自体は5日間ほとんど治まらず、立ち上がってもフラフラだったので、初めて自力で医者に行けたのは、倒れてから6日目のことだった。
マンションの一階がコンビニであったことに、心から感謝した。

合否の結果が届いたのは、おそらく倒れてから4日目か5日目だったと思うが、乱雑に通知書の封を開けて合格の文字を確認しただけで放っぽり出し、「ははは……、感激どころやないわ」と独り言を言って横になった。そして、ようやく数分間隔にはなっていたものの、いまだ激痛を伴う首の痙攣に耐え続けるばかりだったのを覚えている。

このような状態ではあったが、ともあれ大学院への合格は果たしたわけである。
私としては、ひょっとすると、もうこれでひどい不眠からは解放されるのではないかという淡い期待があったのだが、現実としてはさらにそれから9年間持ち続けなければならなかった。
もしも始めからそのことが分かっていたとしたら、私はどれほどの絶望感を味わったことだろうか。


案の定、長くなりそうだ。続きは次回に。


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生活リズムについて - 2009.09.18 Fri

カウンセリングルームを開設して1年半が経過し、ここのところかなり忙しくなってきたために、ぜひ書いておきたいテーマがいくつかあるにもかかわらず、なかなかブログが更新できないでいる。
今回は、その中の一つである「生活リズム」について書きたい。

まず結論から言うと、精神病圏や人格障害、双極性障害など、躁をともなう症例の一部をのぞいては、基本的に生活リズムは気にするべきではない、と私は考えている。
というのは、さまざまな神経症症状をもつ多くの人々と会ってきて、睡眠不足が原因で状態の悪化した人はいるが、生活リズムがくるっていることが明らかな原因で症状の悪化した人を、ほとんど見たことがないからである。
逆に、どうしても生活リズムの整わないことがプレッシャーとなり、結果的に自己嫌悪やうつを深めてしまっている人は無数に見る。

こういったことを考えると、「生活リズムはあまり気にしないほうがいい」というよりも、さらに一歩踏み込んで、「生活リズムは気にしてはならない」と考えるほうがはるかに合理的だ。
さらに言えば、精神病圏の人たちですら、たとえ昼間でも充分に睡眠が取れているならば、症状が急激に悪化していくことはまずもって考えづらい。
つまり、入眠が困難なタイプの不眠の人などは、生活リズムを考えるなどせず、眠れるときに眠ることを心がけるほうが、はるかに合理的で精神衛生上もいいのである。

ひとたび、うつや精神活動の強い内向化の状態が治まれば、生活リズムなどものの3日もあれば整えることはできる。
ちょうど時差ボケを直すほどのことに過ぎないのである。
うつの人にとってもっとも大切なことは、「どうしてもできないことは、しようとしてはならない」である。
できないことにはできないだけの理由があるのだ。であるならば、他のことには見向きせず、その理由を見極めることに最大のエネルギーを注ぐべきなのである。

多くの医師やカウンセラーが「生活リズム」すなわち「早寝早起き」をかなり重視することは、ご承知の通りである。
これはおそらく、精神医学の発展が、基本的に統合失調症の研究を中心に展開されたためではないかと思う。
たしかに、統合失調症の急性期症状は、薬物を用いてでも充分な睡眠をとらせることによって、かなり緩和できる場合が多いのである。
うつの人までが生活リズムの指導を受けるのは、そうした経験知の行き過ぎた応用ではないだろうか。

さらに言えば、「朝起きは三文の得」という、生活リズムに関する一種の倫理観とでもいうべき古典的常識が、こうした考えを後押ししてしまっているのだろうと思う。
そもそも「健康的」という言葉のイメージの大部分は、ステレオタイプ的なお仕着せの常識から来ているものなのだ。
少なくとも、「健康的」と「健康」を混同してはならない。

なお、学校や仕事場にきちんと行くためには、朝起きるということがどうしても必要になってくることは言うまでもないのだが、このことについての私の考えは、次回で詳しく述べたい。



また昨今は「生活リズムを整えることは、脳内物質の調整、ひいてはうつの改善に効果がある」と、まことしやかに語る研究者も少なくない。
だが、その理屈をよく読みこんでみると、論理的に穴だらけだ。というよりも、ほとんど屁理屈である。

極端な例では、「うつは心の病などではなく、脳の病気、つまり脳内物質の分泌や受容の異常の結果である。」と言う。
こういったことを平気で言ってのける無責任な研究者は、本当に、患者の人間的な悩みを、ただの一度でも聞いたことがあるのだろうか、と私は疑う。

最近では、専門家のみならず一般にも比較的よく知られるようになったことだが、うつという症状に、「セロトニン」という脳内物質が絡んでいることは事実である。
簡単に言うと、うつの人の脳内では、このセロトニンの量が少なくなってしまっているのである。
一部の研究者が「うつは脳の病気だ」と主張するのはこういったことを意味するのだが、一方、少なくとも私は、家族関係や人間関係において、うつになる理由がないにも拘らずうつになった人とは、一度も会ったことがない。
人から聞いた話を含めても、ごく稀に、外傷や薬物で脳に損傷を受けた人が、極度のうつに陥ることがある、という例を知るばかりである。

うつに、家族関係や人間関係といった心理的要因が必ず関わっていることを考慮する以上、次のように考えるのが妥当であるはずだ。
「強い劣等感や不安にさいなまれている人においては、自我がそれ以上傷つくことを避けるために、最終防衛手段として、自律神経が感情活動そのものを鈍重化させる。
その感情の鈍重化という自律神経の働きこそが、セロトニンの抑制である。」

つまり、セロトニンの抑制がうつの原因なのではなく、それはうつという症状における脳内の状況、すなわち結果の説明に過ぎないのである。
だから、生活リズムを整えることでうつがよくなるという彼らの理屈は、原因と結果を混同している点で、根本の部分で破綻していることになる。
一部の良心的な医師が、本質的にうつは薬物では治らないと言うのは、こうしたところを正確に理解しているからであろう。

生活リズムを気にすることは、それができない人にとっては自己嫌悪を深めるばかりであり、むしろうつを重くさせてしまう、つまり二次的な原因を作ってしまうということを、はっきりと意識するべきである。



以前このブログで書いたことがあるが、私はちょうど10年間、うつに伴う極度の不眠症を経験したことがある。
次回は、その体験を通じて「生活の夜型化を怖れてはならない」ということを説明したい。

続く



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プロフィール

Author:kohocounsel
大阪市西区にて、夫婦で幸朋カウンセリングルームを運営しております、松波幸雄と申します。

このブログでは、「うつ」と診断される方々の本質的な真っ直ぐさと、ではなぜ彼らが発症しなくてはならなかったかについて、おもに家族病理・社会病理の観点からお伝えしていきます。

なお、皆様のお考えにつきましては、できるだけ読者全員の方々とも分かち合いたいと思いますので、基本的に、コメントは公開設定にてよろしくお願いいたします。

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