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2011-02

「謙譲の美徳」が引き起こす混乱 - 2011.02.27 Sun

1ヶ月ほど前だったと思うが、鳥越さんの『スーパーモーニング』で、面白い実験をやっていた。
就職活動中の大学生と、日本で就職した(就職活動中だったかな?)日本語の話せる外国人数名ずつに対し、面接形式で「あなたの長所を教えてください。時間は無制限です」と頼んで話してもらうという実験である。
外国人のほうは、アジアや欧米などさまざまだったように思う。

実験の結果、日本人大学生と外国人との間には、反応に明らかな違いが出た。
日本人のほうは、ほぼ例外なく、かなり困ってからようやく一つだけ自分のいいところを話し、時間的にも1分程度で終わってしまうのに対し、外国人のほうは、ほんの少し「そうですね……」と考える時間はあっても、平均3~5分、まず淀みなく自分の持てるスキルや性格的な長所のいくつかについて語っていた。

データとしては少ないが、ここまではっきりと態度が分かれていると、やっぱり違うんだなあと考えざるを得ない。
しかも、外国人の国籍はさまざまであることを考えると、日本人だけが、自分の長所を語るについて極端に不得意なのである。



この実験でとくに印象的だったのは、自分の長所について淀みなく話す外国人の姿には、ちっとも傲慢さや嫌らしさが見えなかったことである。
それどころか、自分の長所を相手に伝えることの必要性を素直に理解し、それを誇張なく正確に話そうとする彼らの態度には、むしろ好感さえ覚えた。

これは実験の場面ではあったが、おそらく現実の就職面接においても、彼らは自分の持てるスキルを提示し、それを必要とする企業と雇用契約を結ぶという、「契約」の本質が理解できているのであろう。
つまり彼らの場合、日本人に比べて、雇用者と被雇用者の立場が、かなり対等に近いものとして認識されているのだと思う。

また、ふと気づくのは、私の「ちっとも傲慢さや嫌らしさが見えなかった」という表現自体、外国人から見ればかなり違和感を感じるだろうということだ。
「自分の長所を人に話すことが、どうして傲慢で嫌らしいことなの?」と思うに違いない。
しかし、この感覚はひとり私のものではなく、大部分の日本人に共通する感覚であることは、間違いないだろう。

大学の学生相談室には、就職活動でうつになった学生が多く来談する。
彼らの混乱のほとんどは、大学の就職支援センター(キャリアサポートセンター)での採用面接指導で、「もっと自分のいいところをアピールしなさい」と言われる点にある。
彼らは日本人として、自分の長所を語ることに、根深い抵抗感を植えつけられているのである。

我々が子どもだった昭和の頃には、あるいは今以上にもっとはっきりと教えられていたかもしれない。
大人いわく、
「人のいいところを見つけて、そこを褒めなさい。そうしたら、人があなたのいいところを見つけてくれるんだよ(もちろん、大阪人なのでこんなにきれいな言い回しではない)。」
「自分の値打ちを決めるのは、自分じゃない。人だよ。」
つまり、自分で自分のいいところを強調するのは、いや、口にすること自体、非常に下品なことであると繰り返し刷り込まれてきたわけだ。

時代が下っても、やはりこうした刷り込みはある程度なされていたに違いないのだが、大人になった途端、今度は自分の長所をアピールしろと言うのである。
でも、汗をかきかきアピールしたらしたでやっぱり、よい評価を下さない面接官もいることだろう。面接官もまた日本人なのだから。

紛うことなき、ダブルバインドだ。



『スーパーモーニング』の実験での外国人たちのように、すっきりと嫌味なく自分の長所を紹介できるならば問題はなく、実際にそれがやれる日本人もいるにはいる。
それができない人からできる人を見ると、劣等感を刺激され、圧倒される感覚を覚える。

では、それができる人々は、一般的日本人とどう違うのか。
すでに達観しているというごく稀な例外を除いて、大きくは2つの場合が考えられる。
そういう価値観の家庭環境で育ってきたか、その人自身が本質的にある程度自閉性の強い、空気の読めないタイプ*であるかのどちらかだ。

挫折の経験がなくて、その実空気の読めないタイプの人は、しばしば他者を圧倒するキャラクターの持ち主であったりするのである。
たとえば妙に威厳のある雰囲気の人だとか、バイタリティーあふれるタイプだとか……
もちろん、周囲の評価ばかりか彼ら自身にも、「空気が読めない」という自覚はまずない。

ともあれ、自己の長所をすんなりアピールできる日本人は、あまりいない。
では、日本人の風潮に埋もれ、自己の長所をアピールできない人が、それでも面接官や上司から評価されるためには、どういう方法があるだろうか。

その答えは、私には1つしか見出せない。
「上にへつらう」ことである。

恥ずかしげなくへつらうことのできる人が出世していくケースは、言うまでもなく、嫌になるほどよく耳にする。
しかも、「へつらう」という行動の中には、上司がダメ出しをした人物を嵩にかかっていじめるという、最悪の行動までがしばしば含まれる。

自分に嘘がつけないタイプの人にとっては、ここで八方ふさがりにならざるを得ない。
しかし、私はカウンセラーとして、彼らに「嘘がつけるようになりましょう」と勧めることは、まずもってない。
彼らにとって「へつらう」ことは、ヒマラヤに登頂するよりも困難なことなのだ。

上にへつらうことのできない人の中には、「プライドが高すぎるんじゃないの?」と人から言われ、傷ついた経験の持ち主が多いが(ほんとに無神経な言葉だ!)、決してプライドがそうさせるわけではない。
彼らは、自分の行動の歪みに、拒絶反応を起こしやすいのである。

自分に嘘がつけないという性質は、たとえ望んでも得られない絶対的長所・利点であり、同時に捨てるのもかなわないものである。
それを捨てるということは、自分そのものを放棄するに等しいことなのである。

突き抜けるしかないと、私は思う。
上司や会社ばかりにではなく、「日本」という怪物にも勝つしかないと思うのである。
むしろそのことが、日本文化の本当のよさをも引き出すことになるはずだと、私は考える。

*「空気が読めないタイプ」については、少し詳しく説明する必要があるが、できれば次に別の記事としてアップしたい。

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戦う力 - 2011.02.25 Fri

ここ数ヶ月、ルームの休みを増やしたり、延長料金の設定をしたりと、少しずつではあるが、我々カウンセラーの負担を軽減するための方策を講じてきている。
また、4月からは、定休日を金曜から日曜に変えたいと思っている。
休みが平日だと、子どもを学校に送り出す準備のために早起きせねばならず、結局ほとんど休息にならないからである。

とにかく、私も妻も疲労が激しい。
しかし、この疲労の理由は、休みが少ないためばかりではない。
クライアントの方々の置かれている状況が、おしなべて、年々難しくなってきているためだろうと考えている。

とくに、さまざまな精神疾患の温床となっている企業体質の悪化については、年々ひどくなっていく加速度が大きい。
本来、おおよそ人の上に立つだけの能力のない者、つまり問題全体の構造は見えず、他者の痛みは感じず、躊躇なく目下に理不尽を押しつけることのできる者が、「その理不尽さゆえに」出世してしまっている傾向も、以前よりはるかに強いと感じる。

長引く経済不況が企業を圧迫し、そこで生まれたひずみが、おもに生真面目な人々のところへ集まってしまっているのである。
だが、経済不況の影響ばかりが原因だとは言いがたい。
経済不況を一つのきっかけとして、「日本」という集団・国家が、長い歴史を通じてもともと潜在的に持っていた不合理な傾向が暴き出されてきている側面もあることを、見逃してはならないだろう。

さらにはその背後に、世界全体が決して良い方向には向かっていないのではないかという、嫌な予感も多分にある。
法治国家ではない中国の経済発展などを見ると、必ずしも卑怯を嫌う者が報われるわけではないという現実を鼻先に突きつけられているような、苛立ちと空虚感を覚えさせられる。



カウンセリングルームを訪れる生真面目な人々の多くは、争いを好まない。
一つの物を取り合うような状況になると、「争うくらいなら、譲るほうがましだ」と、あっさり譲ってしまう。
出世欲も、ほとんどない人が多い。
結果、彼・彼女たちは、「好き放題にしていい相手だ」と周りから認知されてしまう。

だが、彼・彼女たちも、我々も、まだまだこの歪んだ社会の中で生き抜いていかねばならない。

戦う力の必要性を、この上なく感じさせられる。

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手作り箱庭アイテム - 2011.02.09 Wed

  滝1



この4月で、カウンセリングルームを開業して早3年になるが、思い起こせば、開業前に私と妻が一番ハマっていたのは、箱庭療法に使うアイテムの手作りだった。

われわれの心理療法ではやはり談話療法(カウンセリング)がメインになるので、箱庭療法を用いることはそんなに多くはないとわかっていたのだが、面接室にどういったアイテムを並べているかは、ある程度カウンセラーのキャラクターを表現することになる。
また、箱庭アイテムは、ふとした視線のやり場になったり、部屋の雰囲気を和らげたりする面もあるので、実際には箱庭以外にも効用は広いと言える。

だが、すべての箱庭アイテムを専門業者から買ってそろえると、すごく高額になってしまうのである。

だが実際のところ、私と妻がそこまでアイテム作りにハマっていたのは、開業前の不安(ほとんど恐怖!)を紛らすためみたいなものだった。
顔を突き合わせば、ああいう場合があるかもしれない、こういうことが起きればどうすればいいかなど、やってみなければわからないことばかりが話題になって、へとへとになってしまう。

で、どちらからともなく作業に取り掛かるとたちまちやめられなくなってしまい、平日であるにもかかわらず、気がつけば2時3時になっていることもしょっちゅうだった。
ほとんど休みのたびに100均ショップなどに行き、ちょっとした置物や素材を買い集め、平日に仕事と家事のすべてを終えた後で、作業に取りかかるわけである。

しかしその結果、取り扱い業者からはほとんど買わず、それでもかなり充実した質と量のアイテムをそろえることができたと思う。

今回は、3年前の苦労を振り返る……というわけでもないが(まだそれほど苦労を脱したわけでもないので)、2人がせっかく一生懸命に作ったものではあるし、一部ではあるが、手作りアイテムたちに少し陽の目を見せてやりたいと思ったわけである(ちょっと自慢もしたいし……)。

ちなみに、おおよそ造形は私、塗装は家内が担当した。

考えてみれば、このブログで写真をアップするのは初めてやなあ……


地蔵さん
粘土(フォルモ 茶色)・竹串等使用 よだれ掛け(?)は妻の母が作ってくれました。
たぶん、粘土で作った最初のもの。
「たとえば地蔵さんなんか作れるかなあ」とやってみたら、けっこういいのができて、結局それが一番よかったということになりました。


寝男子

寝女子
眠る人、2体。
男性のほうは白のフォルモ、女性のほうは滑らかな感じがほしかったので樹脂粘土で作りましたが、中に針金の骨材が入っていて、樹脂粘土のほうは収縮でひびが入っちゃいましたね。
修理しないと……


逆風
風に逆らって歩く人。白のフォルモ使用。マントは樹脂粘土。


大木
葉はダイソーで買った造花、幹と枝は茶色のフォルモ。骨材は針金。
うろ(空洞)のある木がほしかったんですね。


吊り橋
吊り橋。割り箸と針金使用。


竜巻と富士山
竜巻と富士山。もう少し細い針金だったら、もっと竜巻のうねる感じがうまく出せたんだけど……
富士山のほうは、発泡スチロールとフォルモ。
右にあるのは、大きさ比較のCDケース。


かまど
前の職場で、暇だったときに作ったもの。退職時にもらいました。
たしか白のフォルモで、取っ手は事務用クリップです。
黒い色はマジック、かまどのくすみはタバコの灰をこすり付けました。


滝2
この記事トップに載せた滝。
作りかけで2年くらい放っていたものを、最近やっと仕上げました。
茶色のフォルモ、ベニヤ板、骨材に金網使用。滝の部分はビニールの荷造り紐で、滝壺には透明樹脂を使いました。右は、大きさ比較の単3電池。
水に関するアイテムが、一つもなかったんですよね。
さて、もう1つ家内の分を作らねば……


縮尺
↑クリックで拡大。
CDケースと比べています。このくらいの大きさです。



ここから先はオリジナルではなくて、当時ダイソーで30体(?)100円で売ってたプラ人形に、ちょっと手を加えたりして色を塗ったものです。
画像をクリックして拡大してください。

海賊
海賊。


中世兵士1 中世兵士2
中世ヨーロッパの兵士たちです。


worker
工事の人たち。


農夫
アメリカの農夫。


消防士
消防士です。ノズルの部分は爪楊枝です。

農夫と消防士は、もともと工事する人たちの人形でしたが、樹脂粘土をくっつけ塗装して、こんな風にしました。


もしまた新しいのがたまってきたら、アップするかもしれません。

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Author:kohocounsel
大阪市西区にて、夫婦で幸朋カウンセリングルームを運営しております、松波幸雄と申します。

このブログでは、「うつ」と診断される方々の本質的な真っ直ぐさと、ではなぜ彼らが発症しなくてはならなかったかについて、おもに家族病理・社会病理の観点からお伝えしていきます。

なお、皆様のお考えにつきましては、できるだけ読者全員の方々とも分かち合いたいと思いますので、基本的に、コメントは公開設定にてよろしくお願いいたします。

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