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2011-04

「がんばれ」と「腕組み」 - 2011.04.21 Thu

カウンセリングにはいくつかの通説というものがあるが、当然ながら、それらは必ずしも正しいものとは限らない。
というよりも、疑ってみるべきものばかりであるように、私には感じられる。

ちょっと有名なのをあげてみると、

「うつの人に『がんばれ』という言葉を使ってはならない」
「腕組みをするのは拒絶のサインだから、カウンセラーは腕組みをしてはならない」
などである。

これらについて、私が気をつけているかどうかと言うと、ほとんどまったく気にしていない。

たしかに、うつで仕事にいけない人に対し、「明日こそは、がんばって仕事に行きましょう」と言うべきでないのは当然だ。
がんばって行けるくらいなら、はじめからカウンセリングなど受けに来るはずがないし、仕事に行こうととことんまでがんばってきた人に対して、「あなたはまだがんばっていない」と言うのと同じだからである。

本質的に、うつになる人たちは、がんばれない人たちではない。
その多くは、周りの状況が人よりも見えてしまうために、多くのものを一人で抱え込まざるを得ず、人知れずがんばり抜いてた人たちなのだ。

だが、うつの人が非常に重要な内省的思考に入り込むなどしたとき、
「これは、是非がんばって考え抜くべきですね」
と言うべき場合がある。
うつの人々の多くは、自分のクヨクヨ思考にうんざりしているが、反面迷いやブレのない思考は、しばしば大切な結論を導き出すことがあるので、こちらも迷いなくそれを支持し、強化せねばならないことがあるのだ。

もちろん、プロセスの文脈やクライアントの気合いを、慎重にかつ鋭く見据えた上でのことである。


また、カウンセラーの腕組みについては、なぜそれが必ず「拒絶のサイン」になるというのか、まったく理解に苦しむ。

椅子の背もたれに背中を預け、そっくり返るように大きく腕組みをすれば、そうしたサインとなることは多いだろう。
しかし、たとえば、クライアントが非常に大切な記憶の想起をはじめた際に、身を乗り出しつつキュッと小さく腕組みをした場合、
「私は一切口をはさまず、今からあなたの言うことに完全に耳を傾けます」
という態度の現われとなることもある。

つまりその場合、「私は話さない」というサインになり、クライアントは安心して最後まで話し切ることにつながるのである。
そもそも、カウンセラーがクライアントの話を拒絶すること自体、あってはいけないとは限らないのだ。

おしなべて言うと、すべては「中身」と「文脈」次第なのであり、クライアントとカウンセラー双方の性格に左右される部分があるものの、この言葉、この仕草がいけないという固まった考えは持つべきではない。
これは武術で言うところの「居付き」に相当する(……たぶん)。



以前、臨床心理士関係の権威ある機関誌の中で、カウンセリング中クライアントにコーヒーを出すようなカウンセラーは、臨床心理士会から除名するべきではないかという議論が真剣に行われ、掲載されていた。
その議論のくだらなさから、しばし脱力感に見舞われたものである。

そうした形が適切だと判断したならば、あっていいに決まっている。
そもそも除名論者は、実際にそれをやってみた上で「あってはならない」と判断したわけではない。
ただただ多数派であることを頼みに、根拠にならない根拠を並べ立てていたに過ぎない。

ちなみに、私はクライアントにコーヒーを出しはしないが、それは、コーヒーを用意する手間が取れないという理由からに過ぎない。
クライアントがペットボトルの飲み物を持参し、「これ、飲んでてもいいですか?」と言われたときには、「私もコーヒー飲んでいいですか?」とマグカップのコーヒーを持ち込むことはある。

固まった印象に依存し、自分の頭で考えられない者に、適切な判断は期待できない。


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震災と日本人の心理 - 2011.04.16 Sat

4月に入って、カウンセリングの申し込みがやや落ち着いたかに見えたが、やはり第2週目以降かなり多くの方が来談されている。
トータルでは、3月を上回るペースかもしれない。

前回の記事では、震災によって不安が刺激されたのではないかと書いたが、皆さんのお話を伺うと、どうやらそう単純なことではなさそうだ。

未曾有の大震災がもたらした緊張感(風評・原発事故によるものも含め)・あるいは非日常感が、普段は閉じている感覚を覚醒させた、とでも言うべき状態のようなのである。

感覚が非常にリアルになったことで、単調な日常の繰り返しの中では、何となくごまかし、目を逸らすことのできていた自らの負の感情が呼び覚まされ、もともと自分をごまかせない人たちが、ますます自分に嘘がつけなくなっているように見える。
(被災者の方々においては、今のところ、かえって自らの感情に気づけない面があるかもしれない。)

この感情を、再びゆっくりと封印していくのがよいことなのか、それとも「もう嘘をつくのはやめだ」と、自己実現の方向に足を踏み出すのが幸せなのかは、おのおの個別的な問題であり、我々カウンセラーにはもちろん、ご本人にも未知のことである。

いずれにせよ、マイナスの大事件が、ある集団全体の心理を動かす歴史的事例は少なくない。
日本人の心理が、少しでもいい方向に転換することを願ってやまない。



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東日本大震災 - 2011.04.07 Thu

東日本大震災が起こってから、早1ヶ月が過ぎようとしている。

連日流され続けた衝撃的なニュース映像などの影響から、不安が刺激されたせいか、3月はカウンセリングの申し込み数が異常に多く、毎日殺人的といっていいほどのスケジュールに圧迫され、とてもブログ記事が書ける状態ではなかった。

また、刺激されたのは不安ばかりでなく、希死念慮の強い方々の中には、「なぜ生きたいと思う人々が亡くなり、この自分が生きているのか」という苦悩を語る方も少なくない。



いまだ特定されていない行方不明者、発見されていない犠牲者が多数おられ、かつ日本人全体の経済生活にも多大な影響が出続けている状況である。

しかし、にもかかわらず、激しい衝撃を受けた人間の反応なのだろうか、毎日脳裏に叩きつけられるような思いのした、あの恐ろしい津波の映像の記憶が、何かしら遠い過去のできごと、あるいは何かタチの悪い記憶違いであるかのような、奇妙な色合いを帯びていることに気づかされる。
いまだ、心のどこかが、それを受け入れていないのだろう。

実際に被災していない私においてすらこうした状態であるということは、被災され、家族や家を失った方々の心は、今後どれほどの試練を乗り越えなければならないのだろうかと、胸が痛む。
心に深い傷と、恐怖の記憶を抱えながら、一方で、あまりに厳しい現実に直面し、立ち向かわねばならないのである。



一方、多くの義援金や救援物資が寄せられ、各団体・個人のボランティア活動が行われていることについても、連日報道がなされている。

平常時における福祉・ボランティアという領域には、下手をすると偽善的な意図が見え隠れすることは正直少なくない。

ある部分では、整備の遅れから、障害者の人々が不利益をこうむることが多いのは事実だ。
しかし反面、日本古来の「滅私奉公」という考え方が前面に押し出されすぎて、実際、利用者(障害者)の依存心をいたずらに増長させ、反面、末端の福祉従事者の人権が抑圧されるということも、さまざまな機関で頻繁に起きている。
うつを発症し、カウンセリングに訪れる福祉関係者のいかに多いことか。

こうしたことは、日本が福祉大国たり得ない、大きな足枷になってしまっているのではないかと考えさせられる。

しかし、今回のような大災害の後に行なわれるボランティア活動などには、偽善の入り込む余地が非常に少ないように思う。
これらは、動ける者がしないわけにはいかないことなのである。
つまり、被災地が一刻も早く立ち上がってくれないことには、われわれ他地域の者も、やがてはジリ貧に陥るからである。
そこにヒューマニズムが存在することは確かだが、それ以前に、もっと現実的な次元で、絶対的に必要なことなのだ。

人間の身体に例えるならば、日本そのものが重傷を負い、血流やリンパ球が患部に集中し、治癒を急いでいる状態なのである。
決して人事ではない。

福祉やボランティアとは、本来そうしたものなのだと思う。
大きなことはできないが、カウンセラーとしてだけではなく、一市民として、今後自分に何ができるかを注視して考えていきたい。


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プロフィール

Author:kohocounsel
大阪市西区にて、夫婦で幸朋カウンセリングルームを運営しております、松波幸雄と申します。

このブログでは、「うつ」と診断される方々の本質的な真っ直ぐさと、ではなぜ彼らが発症しなくてはならなかったかについて、おもに家族病理・社会病理の観点からお伝えしていきます。

なお、皆様のお考えにつきましては、できるだけ読者全員の方々とも分かち合いたいと思いますので、基本的に、コメントは公開設定にてよろしくお願いいたします。

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