topimage

2017-09

講習会『日本神話と人間関係』-「異」なるものとの対立を超えること - 2010.08.01 Sun

7月25日、大阪は難波神社の一室で、クライアントの方々にのみ告知し、ごくクローズドの形で講習会を行なった。
テーマは『日本神話と人間関係』(副題-「異」なるものとの対立を超えること)である。

以前、このブログで日本神話である『古事記』の現代語超訳をこころみ、その心理学的解釈を行なうと予告していたのだが、分かりやすい言葉で文にすることがあまりに難しく、断念している状態だった。
しかし、相手の顔を見ながら語り言葉で伝えることは可能だと思い、講習会のテーマに選んだわけである。

こういった講義や講演を行うと、内容が真面目なものであるだけに、たいてい眠気を感じる人がある程度の割合でいるものだが、今回の講習会では、そうしたことがまったく感じられなかった。
この体験だけでも、私にとってはかなり新鮮だったのだが、その後参加者の方々から寄せられた感想を読ませていただくと、かなり深く聞き込んでくださっていたのが分かる。
まったく、貴重な体験だった。

講義の形は、あらかじめパワーポイントで資料を作成し、プロジェクターを使ってスクリーンに映し出す方法を取ったのだが、数日前からPCの調子が悪く、途中何度も機械がダウンするというトラブルがあった。
大変申し訳ないことではあったが、参加者の方々は生きた感性の持ち主ばかりだったので、「やはり有機的な場とPCは相性が悪い」と思ったものである。


以下は、そのときの内容のダイジェストである。
要約なので、意味が分かりにくいところがあると思うが、このブログで書いた『古事記』超訳を今一度読んでいただければ、おおよそご理解いただけるのではないかと思う。




「日本神話と人間関係」 -「異」なるものとの対立を超えること


1. 人間にとって、神話・昔話がなぜ大切なのか(なぜ心理学の研究対象となりうるのか)

・神話・昔話のストーリーは、基本的に無文字社会での言い伝えがベースになっていると考えられる。文字によって記録されていないので、代々語り継がれる過程で、話は少しずつ作りかえられる。しかし、そのことによって、万人にとってよりしっくりとくるストーリーが出来上がっていくと考えられる。
物語が文字で記録されると、改変が行なわれなくなるために、物語の成長は止まると言ってもいい。
・こうして、神話や昔話は、人の心のしくみや心の成長のプロセスを、表現するようになる。=普遍的無意識(ユング)の内容の表現
・神話は「自分はどこから来たのか」を教え、セルフ・アイデンティティー(自分はこれこれの者である、という意識)を安定させる。


2. アメノヌボコ - 攪拌の心理段階
(イザナギ・イザナミが、天の沼矛で海をかき混ぜたくだりより)

・渦以前は そこもここも違いがない =新生児の世界(自他が分かれていない)
・渦には中心がある・・・動かない一点(渦の中心)が決まったことで、一応そことここの違いが生じている。 =空間の広がりが認識される、最初の意識段階
・でも、いまだ渦の中では、右も左も分からない
この心理段階の例……周りを振り回す中心人物(ワンマン社長とか、自己中心的親とか……)。いわゆる「カリスマ性」を持った人で、このタイプの人は多い。

特徴……一貫性がないのに自信たっぷり
⇒周りは、いつもその人の顔色を見、何を考えているのか読みとることに専念してしまう。
⇒「私はこの人を尊敬している」と脳が勘違いを起こしてしまう。
=中心に立つためには、矛盾が必要(この人にとっては、論理は毒薬)
これがイザナギの性格


3. イザナギ(・イザナミ)の性格

・イザナギとイザナミの関係
    ・男が先に口をきかなければならない
    ・目に映る女性(イザナミ)の姿は  最高の美 ⇔ 最低の醜悪
    =男尊女卑的・善悪二極的

・矛盾に満ちている
    ・死者を追いかけ、黄泉に降ってしまう
    ・本人の罪ではないのに、ヒノカグツチの首を切り落とす
    ・「見るな」と言われても、我慢できずに見る
    ・自分が戻ってくれと頼んだのに逃げ出し、イザナミを黄泉に閉じ込め、憎む
    ・スサノオに腹を立て 「もうわしは知らん」と役割放棄…ets.

  「千引きの石」がイザナギの性格を表現 = あちらとこちらを無理矢理分ける



4. 男性性と女性性の(代表的な)現れ方

《男性性》  意識性の強いとき……知的・論理的   無意識性の強いとき……高圧的・無茶苦茶な理屈

《女性性》  意識性の強いとき……情緒的・生命力  無意識性の強いとき……取り込む支配性・疑心暗鬼(不安)


5. 三貴子の性格

・アマテラス・・・イザナギの左目より生まれる
   ⇒明るい場所を見る能力
・ツクヨミ・・・イザナギの右目より生まれる
   ⇒暗い場所を見る能力
・スサノオ・・・イザナギの鼻より生まれる
   ⇒本能的に嗅ぎ分ける能力(動物的・本能的)


6. スサノオの性格

・スサノオ・・・名の由来は「荒(すさ)の男」か
    荒々しさ = 自然災害そのもののような神
・母に会いたいと泣き叫ぶ・・・幼児的
・海原の統治を命じられる・・・無意識的(海や沼・池は無意識を象徴する)
すべてにおいて 自然そのもの

ということは、
・スサノオの駄々こね・乱暴狼藉も自然の機能(ホメオスタシス)?
※ホメオスタシス……生物のもつ、生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質

つまりスサノオは、イザナギ・イザナミが作り出した世界のアンバランス(母性が抑圧されすぎた状態)を補正しようとしていた。=イザナミの神霊を救う衝動



7. スサノオの行動の意味

・母に会いたいと泣き叫ぶ ⇒ 母性を遮断していてはならないと 訴えている
・田の畦を壊し 溝を埋める ⇒ 境界線を 取り払おうとしている
・神聖な場所に糞をひる ⇒ 現在の価値観を壊そうとしている
  =ギリシャ神話での「ディオニュッソス(バッコス)」に相当するキャラクター
・馬の生皮を忌機屋に投げ入れる(ワカヒルメの死) ⇒ アマテラス(=古い価値観の代表者)を心理的に殺害し、より高度な論理を確立させる

梭(ひ)とは 横糸を通すための道具 …… 二極構造から四極構造へ



8. アマテラスの性格の移り変わり

・生真面目でズルができない = 完全なうつ性格

 1. 最初に物語に登場したとき
    父親イザナギと同じ立場に立ち、厳格・高圧的
 2. 誓約(ウケヒ)後 ~ 忌機屋のくだり
    受動的・なされるがまま = 無意識のメッセージに心を開く段階
 3. 天の岩戸のくだり
    内向的・内省的 = 受け入れ、同化する段階



9. 誓約(ウケヒ)~忌機屋の段階

・誓約については 日本書紀にいろいろな物語がある
  (スサノオの子が女ばかりだったので、怒って暴れる…ets)
・単に弟をかばうというより、田を滅茶苦茶にしたり神殿に糞を撒き散らしたことの、意味を考えようとしている。
・アマテラスは別名をオオヒルメノムチといい、死んだ機織女は「ワカヒルメ」と日本書紀にある。(ヒル=太陽のこと)
機織女はアマテラスの分身
つまり、ワカヒルメの死とはアマテラスの象徴的死


10. 梭(ひ)について

・論理・理性は、ものごとを判別する(切り分ける)ものであることから、よく剣などで象徴される。梭もまた、縦糸を分けて横糸を通すものであり、ワカヒルメの女陰を突いて死なせたことは、それと同じこと。
・加えて……これまでの二極構造に終止符を打ち、十字(縦糸と横糸のクロス)によって象徴される、高度な精神構造(四極構造)に生まれ変わらせる行為。
・さらに……逆剥ぎの馬を女性の世界に投げ入れるのは、いわば強姦の隠喩だが、これは、この時点ではまだ充分に自我(アマテラス)が、無意識(スサノオ)の投げかけるものを受け入れられてなかったため。


11. 岩戸ごもりの段階

・スサノオの投げかけたものを、受け入れ同化する段階
・女性にとっての 「籠もる」ことの重要性
   生理前症候群(PMS)では、籠もることが許されない状況が関係?
   =ダイエット不可能 ・過食が出やすい

内から生じてくる身体感覚・感情・想念に逆らわず、それらを充分に感じ、自分で自分を抱えること。



12. タマフリの呪術

・真榊・・・神の姿を模したもの?
・鏡・・・これこそがカウンセラーではないかと!(その人の歩んだ道の尊さを映し返す)
・アメノウズメの踊り
   ・ 裸踊りはお笑いの基本?
   ・ 「舞踊」のうち アメノウズメのは「踊り」←「桶を踏みとどろこす」
     「舞」は円運動 ・・・求心性を高める
     「踊り」は縦の動き ・・・シェイクすることで、物事をあるべき場所に治める
   ・ 女陰を見せる
     「お笑い」はありのままの姿を露呈させ、受け入れさせる機能を持つ



13. アマテラス再臨

・一般に、万事に迷いのないイザナギタイプの人のほうが
 尊敬を集めやすい ←父親コンプレックス
・鏡を見て、自らの偉大さを知る =父親越え・父親殺し
岩戸は閉じられない ただしめ縄を掛けたのみ
   ・異界(未知なるもの)との風通しを良くしておくことで、ものごと本来の意味を見失わない
   ・自らの意志によって、こちらとあちらを分ける =常に主体性が関与



少しでも多くの方に読んでいただけたらと、ブログランキングに参加しています。
↓押していただけるとありがたいです。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ うつ病(鬱病)へ

● COMMENT ●

歩き出す・何も持たず

講習会のダイジェストありがとうございます!
ブログと合わせて読ませていただいたので、イメージが良くつかめました。

読ませていただいて思ったのは、現在自分の対面する問題は、まさにイザナギ的なものなのだなあということです。

ある時期までは、確かに自分はそれに育まれ、守られていたと感じるのですが、そろそろそんな時期にも別れを告げる必要があるようです。

ものすごく寂しいのですが、もう戻れないみたいですね。鏡を見つめて、新たな歩みだしができるよう、力を溜めたいです。

はりモグさまへ

早速のコメントありがとうございます。

真底納得できる人生を歩もうとするならば、人の決めた意味のないルールになんか、縛られるわけにはいかなくなるでしょ。
そうじゃない人生を、歩めるものなら歩みたいけど、そんなことができないことも、もう分かっちゃってますしね。

自分もみんなと同じで、普通なんじゃないか……、そういう気分に浸ることがもう許されない寂しさ。はばかりながら、私も感じたことがありました。

ご無沙汰しております。
さっと読んだだけでもとても興味深いと思いました。
先月、野田秀樹氏の公演「ザ・キャラクター」という芝居を
見てきたのですが、そこではギリシャ神話の神が
象徴的にたくさん登場していました。
元の話を知っていたらもっとおもしろいのかも、と思って
ギリシャ神話を読んでみようかなと思ってました。

古事記は、4年前に行った浅野温子さんの朗読劇では
響きの美しさが印象的でした。
読もうと思って買った本は途中で挫折していますが・・・。
読む視点のヒントをいただいたと思いますので
再挑戦してみようと思います。

夏は鬱症状が3割ほどマシになりますが、
太陽の光やら気温の関係でしょうか。

chihayaさまへ

ご無沙汰しております。
「ザ・キャラクター」・・・なんでも町の書道教室が、次第にギリシャ神話が展開する舞台になるとか……
神話のモチーフって普遍的だから、そういう設定もありなんですね(私は見てないですが……)。きっと。
面白そうです。

講習会でも、イザナギを自己中心的な上司に例えたりすると、グッと皆さんの食い付きがよかったような気がします。

熱を放出するために身体が緩むのと、活動性が上がるので、夏は確かにうつがよくなる季節です。
しかし、今年の夏に限ってはあまりに突然やってきたので、体力的になかなかきついようです。

講習会の内容をこちらで伺えてとても嬉しいです。ありがとうございます。
とてもとても興味深かったです!!!
日本神話の内容ある程度、簡単な本や漫画などで知っていたのですが、私には何で?と感じることがたくさんありました。
例えば、イザナギの勝手な態度、言動、スサノオの荒荒しさ、どうして女から(イザナミ)から声をかけてはダメなの?などなど。それらが「なるほど!」と、溶けていき、またさらに自分の体験などと合わさり、考えが深まるように感じています。
次回も楽しみにしています。
ありがとうございます&お疲れ様です。
暑い日が続いていますので、体調大事にしてください。

とんとんさまへ

コメントありがとうございます。
2日ほど家を空けており、拝見するのが遅れてしまいました。

イザナギやスサノオはすごく理不尽に見えるのですが、だからこそ古事記という物語を人間に近づけ、生き生きとさせている面がありますね。
ご自分の体験に近づけられたとしたら、それこそが神話が本来の力を発揮しているということになるのだと思います。

それにしても今年の日本は暑いです。
とんとんさんもお身体にお気をつけくださいませ。


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://kohocounsel.blog95.fc2.com/tb.php/118-96606acd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

「悪い人じゃないんだけど……」? «  | BLOG TOP |  » マスコミのセンセーショナリズム

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

拙著

2015年2月28日発売
アマゾン限定商品

プロフィール

kohocounsel

Author:kohocounsel
大阪市西区にて、夫婦で幸朋カウンセリングルームを運営しております、松波幸雄と申します。

このブログでは、「うつ」と診断される方々の本質的な真っ直ぐさと、ではなぜ彼らが発症しなくてはならなかったかについて、おもに家族病理・社会病理の観点からお伝えしていきます。

なお、皆様のお考えにつきましては、できるだけ読者全員の方々とも分かち合いたいと思いますので、基本的に、コメントは公開設定にてよろしくお願いいたします。

ブログポリシー
当ブログの記事内容の著作権は、幸朋カウンセリングルーム代表松波にあります。
本サイトの内容を権利者に無断で複製・改変することは、固く禁止いたします。

関連ページ

最近のコメント

最近のトラックバック

最新記事

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

カテゴリ

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

RSSフィード