前回、『こぶとり爺さん』分析の最後、「隣の爺さん」について書くと予告したが、多くのうつのかたのブログを読んでいて、ぜひ早いうちに書いておきたいことが出てきたので、1回だけ別の話題にしたい。
ただ、今回も、少しばかり難しい話しになってしまうのだが、お許しいただきたい。
今回書きたいのは、このブログのタイトル、「うつ−自分にうそがつけない人たち」とは、現在増加している、抑うつをともなった精神疾患の人すべてについて言えることなのかどうか、ということである。
結論から言えば、「自分の気持ちや考えに、どうしてもうそがつけない」というのは、基本的に単極型のうつ、つまり、四六時中、無気力感と劣等感、また不安や不眠と闘わねばならない、いわばもっとも典型的なうつの人に特徴的な性格である。
細かく言えば、過敏性大腸炎や、たびたび微熱を発するなどの身体症状をともなうものも、含めることができると思う。
私はカウンセラーなので、もちろん会っているのはうつの方ばかりではない。
では、なぜこのブログのテーマを「うつ」にしぼったのかというと、私自身が単極型のうつを経験したから、というばかりではない。
現在増加している、社会の歪みの影響を受けたさまざまな症状のうち、単極型のうつが、もっとも基本的で代表的なタイプだと考えているからである。
まだ、系統立てて症状を分類しているわけではないので、まだまだ穴のある考えではあるが、たとえば過食(過食嘔吐を含む)やパニック障害をともなうものなどは、ある程度単極型のうつに近い病理を持つように思う。
それと比べて、双極型の感情障害(躁うつ病)は、大なり小なり自己愛性(ナルチシズム)をともない、超絶な能力を発揮する人も多く、ほぼ例外なく劣等感をともなう単極型のうつとはかなり違った病理を持っている。
躁うつ病の場合は、躁状態にある時、自分の感情をスッパリと置き去りにすることができるのである。
つまり、感情と、思考や行動との間に、ある程度深い亀裂(乖離)が存在するのだ。
で、躁状態の時に突っ走れるだけ突っ走るが、「これ以上の無理はヤバイ」と脳から(身体から?)ブレーキの指令が出るや、それまで切り離していた自らの感情に追いつかれ、うつに入っていくというパターンとなる。
自らの負の感情から解放される爽快感は空を飛ぶごとくであり、太陽に近づきすぎて翼に塗った蝋がとけ、海に落下してしまったギリシャ神話のイカロスの話は、まさに躁うつ病の状況を写し取ったかのような物語である。
過食やパニック障害の場合、基本的にはうつ的なのだが、劣等感や無気力感といったうつの病理をそういった形で症状化し、吐き出すことで、多少なりとも自我のバランスを保とうとしている反応、と言える。
実際、毎日過食嘔吐を繰り返しながらも、何とか社会に適応している人は少なくない。
これらの場合、症状化する段階でやはりある程度の乖離は生じているが、躁うつ病に比べて、乖離の度合いははるかに小さい。
これらが単極型のうつに近いと私が考えるのは、そういう理由である。
単極型のうつの人にとっては、割り切って仕事ができる、つまり乖離できるということは、ほとんど憧れですらあるのだが、どうしてもそれができない。
つまり、「自分にうそがつけない」ということになり、加えて、場の歪みの影響をもろに食らってしまうことにもなるのだ。
ところで、人格障害に関しては、やや事情が複雑であるといわざるを得ない。
というのは、人格障害の場合、基本的に社会性の障害、つまり人間関係の中でどのような問題を引き起こすかが鑑別の基準となっているため、このような内的な病理による類型化がむずかしいのである。
ただ、パニック障害であっても不安障害であっても、当然周囲との間に何らかの問題がともなう場合は多いので、あやまって人格障害と判断されてしまっているケースは多いように思う。
実際、他の機関で境界性人格障害と判断された人で、継続面接してもその兆候がまったく見えないまま、うつやパニックの症状が改善し、円満に終結していった人は少なくない。
たとえば、不安障害の人などは、相談者が何を考えているか分からない場合など、ますます不安が掻き立てられるために、相談者に電話をかけまくったり、予約時間外に押しかけるなど、しばしば境界性人格障害と見まがうような行動に走ることがある。
たとえば、心理テストを行なった後に、かなりの情報を得たにもかかわらず、カウンセラーがほんの少ししか内容を話さなかった場合や、一向に自分の考えを話さない面接が続いた場合などに、このような事態に陥ることがあるのだ。
クライアントは馬鹿ではない。
隠されていることがあればたいてい分かるし、第一、心理テストの結果などは、クライアント本人にかかわることなのに、他人である相談者しか知らない内容がたくさんあるなど、明らかに非人道的だと言いたくなる。
しかし、恐ろしいことに、このやり方は意外と一般的なのである。
私の場合は、全部話す。(めったにテストはしないのだが)
できるだけ詳しく、ここから先はこれこれの理由で分からない、と言えるところまで話す。
でなきゃ、おかしいからだ。
話せないくらいなら、最初からテストなどするべきではない。
現代人に共通する不安の理由の一つとして、周囲に「何を考えているのか分からない、得体の知れない人」が増えた、ということがあげられる。
このことは、昔と今のご近所づきあいの変化を考えれば、容易にお分かりいただけると思う。
日本人の数10パーセントが、隣人の職業すら分からない集合住宅に住んでいるのだ。
なのに、カウンセラーが未知というベールに身を包み、得体の知れない人になって、いったいどうしたいのだ!と言いたい。
まあ、自分を大きく見せたいのだろうと思うが……
突然怒りのスイッチが入って、横道にそれてしまった。
ともあれ、人格障害についてはまだはっきり書くことはできなかったものの、私が単極性のうつを現代人の代表的な症状と考える理由は、ある程度お分かりいただけるのではないだろうか。
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テーマ:うつ病(鬱病)、メンタルヘルス - ジャンル:心と身体